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2023.04.20

コラム

日本のやきものの歴史

私たちは朝起きてから夜寝るまで、それぞれの用途に応じて、数多くの食器を手にして日々を過ごしています。しかし、その食器たちは、どのようにして現在のような姿になっていったのでしょうか。
今回のコラムでは、食器の中でもやきものに関する歴史についてご紹介いたします。

目次
1. やきもののはじまり
2. 日本のやきもの産業の発展
3. 実用品から観賞用に
4. 磁器の登場
5. 現在のやきもの生産

やきもののはじまり

初期人類は、現在のようなやきものの食器とは無縁でした。せいぜい食器と呼べるようなものとしては、現在も東南アジアの一部で見られるように草木の葉っぱが使用されていたと言われています。

農耕をするようになり文明が起こる頃になると、余剰食糧や水の貯蔵のためにやきものが作られるようになったと言われています。もっとも初期のやきものは「土器」と呼ばれる、粘土をこねて成型し、低温で焼いて固めた、粗放的なものから始まりました。日本でも1万年ほど前の縄文時代から縄文式土器が作られてきたのは皆さんもご存知かと思います。

その後、窯の改良がなされて焼成温度が上がり、やきものの強度も上がっていきました。

5世紀頃には朝鮮半島から窖窯(あながま)と呼ばれる、斜面に溝を掘って土で天井を覆った、登り窯の原型のようなものが伝わりました。その窯で作られた須恵器と呼ばれるやきものは、広く長く庶民にも使われる実用的なものとなっていきました。

また、釉薬(ゆうやく)の導入が、更にやきものの使い勝手を良くしていきました。釉薬を塗って焼くことにより、やきものの表面に薄いガラスの層が作られます。これまで須恵器は吸水性が高いのが難点でしたが、釉薬の導入によって、やきものの保水性が飛躍的に高まりました。

最も初期の釉薬は、灰釉(かいゆう)と呼ばれるもので、文字通り草木を燃やした灰を水に溶かして作られたものです。何度も使った窯の天井や側面に付着した灰の一部が焼き物に降り落ちてきて、焼成後それがガラス質になっていたことから釉薬を思いついたのではないかと想像されます。現在でも、薪で焼かれた伝統的な製法の信楽焼などにその風合いを感じ取ることができます。

日本のやきもの産業の発展

日本各地でやきものの生産が試みられましたが、次第に良質の粘土が産出される地域に生産が集約されるようになっていきました。鎌倉時代頃には「六古窯(ろっこよう)」と呼ばれる、6か所の産地が有名となり、これらの産地の多くは現在もやきものの産地としてにぎわっています。

  • 六古窯

・越前窯(福井県織田町)
・瀬戸窯(愛知県瀬戸市)
・常滑窯(愛知県知多半島)
・信楽焼(滋賀県信楽町)
・備前窯(岡山県備前市)
・丹波窯(兵庫県多気郡)

実用品から観賞用に

須恵器から始まり、日本でやきものは長い間実用品として扱われてきましたが、その歴史に変化を加えた人物がいました。安土桃山時代の戦国武将、古田織部です。当時茶の湯が流行し始めた時期で、古田織部は戦国武将でありながら茶道の創始者千利休に師事、利休の死後は茶道界を率いるようになっていきました。成型した食器をわざと歪ませてみたりと実用一辺倒だった食器に遊び心をもたせたり、何より釉薬に工夫をして赤や緑と様々な色合いの器を作り、鑑賞用にまで高めていったのでした。現在に至るまでの日本のやきものの豊かな色合いは、この古田織部によってその文化が始められたと言えます。今でも深い緑色の釉薬は、古田織部の名前からとり、「織部焼」として広く親しまれています。

磁器の登場

磁器とは、長石や珪石を細かく砕いて粘土状にしたものを成型、高温で焼成したやきものです。同じやきものの中でも、陶器に比べてガラスに近いため透水性がほとんど無く、光に向けてみるとわずかに透光性があります。何よりその白い生地が特徴で、そのため様々な装飾的絵付けの素材として重宝されてきました。

中国では景徳鎮で古来作られてきましたが、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に連れてきた朝鮮の陶工が、九州伊万里に磁器に適した陶石を発見したことから、一気に日本での磁器生産が盛んになりました。江戸後期から明治、大正、昭和にかけて、日本の陶磁器は世界中に輸出され、日本の発展に一役買う事となっていったのでした。

現在のやきもの生産

世界を席巻した日本のやきもの産業ですが、1990年代から中国メーカーが台頭するようになり、現在はすっかり中国製品ばかりの世界市場となってしまいました。一方で日本のやきものメーカーはこれまでの技術を生かし、実用性だけでなく、より趣味性の高い商品をそれぞれの産地の特色を活かしつつ現在も盛んに生産しています。

現在有名なやきものの産地とその特徴は下記の通りです。

美濃焼(岐阜県多治見市 土岐市 瑞浪市) 日本で最大の陶磁器産地
瀬戸焼(愛知県瀬戸市) 六古窯の一つ。招き猫などのノベルティーが有名
常滑焼(愛知県常滑市) 急須の生産で有名
萬古焼(三重県四日市市) 土鍋など耐熱陶器が中心だが急須、食器も多い
・伊万里焼 有田焼(佐賀県有田町) 高級磁器で有名
波佐見焼(長崎県)全国的には伊万里、有田が有名だが、同様に良質の磁器を作っている
信楽焼(滋賀県信楽町) 六古窯の一つ。たぬきの置物が有名だが、花瓶、食器なども作っている
・備前焼(岡山県備前市) 六古窯の一つ。焼き締め(釉薬をかけずに高温焼成する)の独特な風合いが特徴
九谷焼(石川県)独特の手描き装飾が有名
京焼・清水焼(京都府京都市) 九谷同様、美しい手描き装飾が特徴の伝統ある高級陶器
・萩焼(山口県)独特の風合いが特徴
・岩見焼(島根県)伝統ある民芸陶器の味わいで昨今人気が高まっている
・益子焼(栃木県)峠の釜めしが有名だが、自由な作風で若手作家が育っている

これら産地ごとのやきものの特徴は、今後もこのコラムで順次紹介していきます。

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