News

お知らせ・コラム

2023.06.23

コラム

九谷焼とは?世界に認められた芸術性と美術的価値

九谷焼(くたにやき)は、石川県の金沢市、小松市、加賀市、能美市で生産されている伝統的な磁器です。その精密な絵付け装飾が高く評価されており、国内では宮内庁御用達の贈答品として活用されています。また海外でも多くの著名人に愛用されるなど、高い地位を確立しています。
今回のコラムでは、九谷焼の歴史、特徴についてご紹介いたします。

目次
1. 歴史:100年間の謎の空白期間を持つその歴史
_1-1. 古九谷
_1-2. 再興九谷
_1-3. ジャパンクタニ
2. 特徴:良質な陶石、美しい装飾
_2-1. 素材
_2-2. 装飾
3. おわりに

歴史

古九谷

九谷焼は、江戸時代初期の1655年頃に、九谷村(現在の石川県加賀市)にて誕生しました。九谷村で陶石が見つかったことがきっかけで、第3代加賀藩の前田利常が磁器の生産に踏み出したのがそのはじまりです。磁器の生産を始めるにあたり、利常の息子で茶人の利治が治める大聖寺藩の藩士、後藤才次郎が、磁器生産の名所である有田に派遣されることとなりました。有田で製陶技術を学んだ才次郎は、その後九谷へ戻り、窯を築いたことで九谷焼の生産がはじまることとなったのでした。

才次郎は、九谷での磁器製作にあたって、華麗な装飾性をもつ加賀百万石文化を反映し、独特な様式美の磁器を生み出しました。この頃に作られたやきものは「古九谷」と呼ばれ、今なお日本の絵付け磁器の代表として、高い美術的価値を持っています。

しかし、この古九谷の時代はなんと45年ほどしか続きませんでした。1700年代の初頭に突然廃窯してしまったのです。その理由は現代でもわかっておらず、謎に包まれたままです。

再興九谷

1807年、約100年間の謎の空白期間を経て、九谷焼の再興の取り組みが始まりました。藩営の窯である春日山窯が金沢に開かれ、これにあたり、京都から有名な陶工である青木木米が招聘されました。また春日山窯の開業を機に、個性を活かした画風を持つ窯が次々に開業し、九谷焼は無事再興されたのでした。新たに開業した窯として、木米の門下が開いた若杉窯、大聖寺藩の豪商である豊田伝右衛門が開いた吉田屋窯、吉田屋窯を引き継いだ宮本屋窯、大聖寺藩が築いた松山窯などが数えられます。この時期に作られた作品は「再興九谷」と呼ばれます。

ジャパンクタニ

明治時代の1873年に、オーストリアのウィーンで開かれた万国博覧会をきっかけに、海外でも九谷焼の美しさが高く評価されるようになりました。特に、九谷庄三(くたにしょうざ)による、彩色金襴手と呼ばれる赤絵と金彩による精密な絵が描かれた皿は人気を集め、「ジャパンクタニ」などと親しまれました。海外から大量に注文が入り、貿易が盛んに行われました。

現在、九谷焼は宮内庁御用達の贈答品として活用されています。海外でも、多くの著名人に愛用され、世界での地位を確立しました。また、平成の時代には、三大徳田八十吉、吉田美統などの人間国宝が誕生しています。

特徴:良質な陶石、美しい装飾

素材

九谷焼は花坂地区の陶石を原料にしています。陶石の産地は日本でも数カ所のみしかなく、花坂地区は、その貴重な陶石産地の一つです。ここでは、今も衰えることなく採石が続けられています。

陶石を細かく砕き、水と混ぜ合わせて作った花坂地区の坏土は、腰が強く、やきもの作りにぴったりでした。非常に良質であり、九谷の名工たちから「花坂陶石場から採掘した陶石を使ったものでないと、真の九谷焼とはいえない」と語られるほど、九谷焼の制作にとって花坂地区の陶石は特別なものなのです。

装飾

九谷焼の魅力は、何といってもその装飾の美しさです。九谷五色である赤、黄、緑、紫、紺青を基本にした鮮やかな色使いで、絵画のような美しい絵柄が描かれています。

古九谷では、狩野派の画家である久隅守景が前田家に仕えて、九谷焼の陶画を描き、大胆な構図・自由な線で描かれた豪快で味わい深い、古九谷の作品が作られていったのでした。

再興九谷では、窯によって特徴がそれぞれありました。

・木米風:全面に赤色を施し、九谷五色を使って人物を書き込んだ中国風の作り。
・吉田屋風:赤を使わず、残りの4色での色使いを施す。
・宮本屋風・飯田屋風:赤で線密に人物を描き、周りを小文で埋め尽くした様式。
・永楽風:全面を赤色を下塗りし、その上に金色のみで彩色。
・庄三風:古九谷から続く全ての手法を間取り形式で取り入れた。

いずれも非常に豊かな色使いで、美術的価値・芸術性が高く、人々を魅了させています。

おわりに

九谷焼の楽しみ方は、その美しい色彩と絵付けを眺めることです。九谷焼は、花鳥図や風景画、人物画など、さまざまな絵柄が描かれています。また、絵付けの技法も、古九谷の自由な筆致から再興九谷の写実的な画風まで、時代によってさまざまです。

九谷焼は、食器としてはもちろん、インテリアとしてもお楽しみいただけます。お気に入りの九谷焼を見つけて、長く愛用してみてはいかがでしょうか。

井元産業では、多種多様な日本の陶磁器や焼き物を扱っております。詳しくは「取引実績・商品」ページをご覧ください。

(参考)
石川県九谷陶磁商工業共同組合連合会
石川県九谷焼美術館
九谷焼MAG

ALL

Category

Archive