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2025.03.31

コラム

若狭塗とは?海の輝きを映し出す伝統工芸

目次
1. 若狭塗とは
2. 歴史: 若狭塗の起源と発展
3. 特徴: 若狭塗の技法と美
4. おわりに

若狭塗とは

若狭塗は、日本の伝統的な漆塗り工芸品の一種で、若狭湾に面する福井県小浜市周辺で作られています。1978年に通商産業省(現・経済産業省)によって国指定の伝統工芸品に認定されました。特に塗り箸の生産が盛んで、国内生産量の約80%を占めています。また、小浜市の特産品であることから、バラク・オバマ元大統領に若狭塗箸が贈られたことも話題になりました。若狭塗は貝殻や卵の殻を使い、色漆を塗り重ねることで生まれる海底を表現した美しい模様が特徴です。その高貴な輝きから「宝石塗」と呼ばれることもあります。さらに、若狭塗が他の漆器産地と異なる点は、椀の生産がほとんど行われていないことです。この理由は若狭塗の歴史に深く関連しています。

歴史: 若狭塗の起源と発展

若狭塗の起源は約400年前の江戸時代、17世紀初頭にさかのぼります。小浜藩の漆塗職人である松浦三十郎が、中国から伝わった漆器を模倣して製作したのが始まりとされています。当時の小浜藩主である酒井忠勝がこれを気に入り、「若狭塗」と命名して藩の保護を受け、地場産業として発展しました。
宝石のような輝きを持つ華やかな若狭塗は、公家や武家、裕福な商家の調度品として愛用されましたが、質素倹約が美徳とされた江戸時代には庶民の手に届くものではありませんでした。そのため他の漆器産地とは異なり、庶民的な生活道具である椀は若狭塗では作られず、主に盆、重箱、硯箱、茶托などが生産されました。現在は塗り箸が若狭塗を代表する製品ですが、江戸時代には箸作りはまだ盛んではありませんでした。
若狭塗箸専門の製造事業所が登場したのは明治時代以降のことです。明治中期には生産量が約50万膳程度となり、1916年には800万膳、1924年には1500万膳と急速に増加し、若狭塗の生産額の約8割を塗り箸が占めるようになりました。その背景には、若狭塗や塗箸関連の組合設立による販売促進や、大量生産体制の確立がありました。その後、生産過剰や昭和恐慌の影響を受けつつも盛衰を繰り返し、現在では日本国内塗り箸のシェアの約8割を占めています。1978年には国指定の伝統工芸品に認定され、伝統と技術の結晶として位置付けられています。

特徴: 若狭塗の技法と美

若狭塗の最大の特徴は「研ぎ出し」技法にあります。貝殻や卵の殻、松の葉などで模様を作り、その上に漆を何十層にも塗り重ねます。その後、漆の層を丁寧に磨き上げることで、海底を彷彿とさせる美しい模様を浮かび上がらせます。この過程によって深みのある光沢と立体感が生まれ、堅牢性にも優れた漆器が完成します。
多くの漆器産地では木地師、下地師、塗師、蒔絵師などが各工程を分業しますが、若狭塗は60以上の工程をほぼすべて1人の職人が手がけます。このため、1つの製品を完成させるのに数ヶ月から1年もの時間がかかります。職人が一貫して製作を行うことで、個性が強く反映されることも若狭塗の魅力です。また、若狭塗箸の箸先は細く仕上げられているのが特徴で、「鶴のくちばし」とも呼ばれ、縁起の良い長寿の箸として知られています。

おわりに

若狭塗は、400年以上にわたる歴史と卓越した技術で作り上げられた、日本が誇る伝統工芸品です。その美しさは、職人が一貫して手がける「研ぎ出し」技法と自然素材を活かした深い光沢にあります。塗り箸をはじめとする若狭塗の製品は、国内外で多くの人々を魅了し続けています。この伝統の魅力を守りつつ、現代のライフスタイルにも適応し、新たな価値を生み出すことが求められる時代です。ぜひ若狭塗の箸を手に取り、その使い心地と美しさを日々の生活で楽しんでみてください。

井元産業でお取り扱いしております若狭塗箸はこちらの商品ページよりご覧いただけます。他にも様々な種類のキッチン用品、テーブルウェア、日用雑貨を取り扱っています。詳しくは、「取引商品・実績」のページをご覧ください。

(参照)
箸のふるさと館WAKASA
KOGEI JAPAN
中川政七商店の読みもの
The Ichi
福井県における伝統的工芸品産業振興のための一考察 南保勝

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