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2024.09.05
コラム
名古屋陶磁器会館について
「陶磁器の一大産地」といわれて、名古屋をイメージされる方はどれほどいらっしゃるでしょうか?現在はそのイメージがかなり薄くなってしまいましたが、明治時代後期から昭和初期ごろまでの名古屋は、全国でも1、2位を争うほど陶磁器産業が盛んで、特に輸出向けの陶磁器に関しては圧倒的なシェアを誇っていました。今回のコラムでは、名古屋での陶磁器産業の繁栄を象徴する、名古屋陶磁器会館についてご紹介いたします。
目次
1. 名古屋陶磁器会館について
2. タイルから見た陶磁器会館
3. 展示品から見た陶磁器会館
4. 最後に
名古屋陶磁器会館について
名古屋陶磁器会館は1932年に今の名古屋市東区に建てられました。
この会館が立てられた当時、日本では陶磁器産業が栄えており、名古屋周辺には600を超える陶磁器を扱う製造業者、加工業者、貿易業者がありました。より大きなまとまりとして組合が必要だと考えた井元為三郎(井元商店(現:井元産業株式会社)創業者)らにより、1910年名古屋陶磁器貿易商工同業組合が設立されました。その組合の活動の場として後に建てられたのが、名古屋陶磁器会館です。
現在は一般財団法人 名古屋陶磁器会館として所蔵品の展示や歴史的価値の発信をされています。また、建築としての価値も高く、名古屋市景観重要建造物に指定、国登録有形文化財建造物に登録されています。
名古屋陶磁器会館は建築や所蔵品、歴史の面から見ても大変貴重な資料となっていますが、今回はその中でも井元産業の取り扱いの主である「陶磁器」の点から見ていこうと思います。
「タイル」から見た名古屋陶磁器会館
名古屋陶磁器会館にはたくさんのタイルが使われています。その中でも歴史的な背景がわかるような装飾をいくつか紹介します。
スクラッチタイル
名古屋陶磁器会館の外壁は、スクラッチタイルというものが使われています。こちらは近くでよく見ると「スクラッチ」という名の通り、引搔いたようなデザインのタイルになっています。1920年ごろから外壁などに使用され始めたもので、自然な凹凸が温かみを出すだけでなく、耐久性にも優れたタイルです。現在は明治村で見ることのできるフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテルのライト館にも、煉瓦にスクラッチ装飾を施したスクラッチレンガが使われています。
ダイヤタイルとモンキータイル
陶磁器会館の玄関に入ると、床にタイルが敷き詰められています。こちらは当時の伊奈製陶所(現LIXIL)で製造されていたタイルで、下の1枚目の写真のダイヤ形のものは「ダイヤ」、2枚目の写真の不思議な形をしている方のタイルは猿の顔のように見えることから「モンキー」と呼ばれていたそうです。
こちらのタイルは当時の職人がスペースに合わせてタイルの形を整えながら一枚一枚貼り付けていったものだそうで、隙間なく埋められていることからその高い技術がうかがえます。
その他にも名古屋陶磁器会館はタイルが装飾として様々なところに使われており、当時の建築様式や歴史を学ぶことができます。
「展示品」から見た名古屋陶磁器会館
名古屋陶磁器会館では所蔵品が常設展示されているエリアと、季節ごとのテーマに合わせて展示されているエリアがあります。今回は常設展示されているものの中から、一部を紹介します。
凸(デコ)盛り、ガラス盛り
凸盛りとは名古屋ならではの技法のひとつで、磁器の表面に盛り上がって見える装飾を施すことを言います。
ガラス盛りはその中でも表面に細かいガラスを盛り付けることで、粒粒のガラスが繊細に輝いて見える美しい技法です。
上絵付け
上絵付けとは、陶磁器に釉薬をかけて焼いた後、その上に絵柄を描いて装飾する技法です。
こちらの作品は初めて見られる方は困惑されるかもしれませんが、「百老」という百人の老人が描かれているデザインで、幸福のモチーフのひとつとされています。
細かい柄は当時からスタンプなどを使って絵付けしていたそうですが、それを加味しても手の込んだ作品になっています。
ノベルティ
現在のノベルティという単語の意味ではなく、陶磁器で作成した人形などの装飾品のことを指しています。
こちらの人形のレースのような洋服部分は陶磁器で出来ており、布のレース生地に粘土のようなものを馴染ませ焼くことで、布部分のみが焼失して繊細な洋服部分が仕上がります。
最後に
名古屋陶磁器会館では名古屋で陶磁器産業がどのように発展していったか、当時の状況がどのようだったかを展示品や建物から学ぶことができます。解説付きのツアーや絵付け教室も開催されており、お土産に陶磁器の購入も可能です。興味のある方はぜひ訪れてみてください。
また、井元産業ではこういった歴史を経て発展した日本の陶磁器食器をたくさん取り扱っております。取引商品・実績などのページから様々な食器もご参照ください。
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