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2024.05.22

コラム

粉引とは?わびさび感じる陶器の装飾技法

温かみのある柔らかな白色が特徴の「粉引(こひき)」の器。
粉引の器は、佗び茶がはじまる16世紀後半(安土桃山時代)に、茶の湯茶碗の主流となり、その後も主に茶碗や酒器で高い評価を受ける数多くの名品が生まれています。
今回のコラムでは、粉引の特徴、茶の湯に通じる奥深さ、商品のご紹介をいたします。

目次
1. 粉引とは
2. 特徴① 3層構造
3. 特徴② 御本
4. 粉引の器のデメリット
5. わびさび 器を育てる楽しみ
6. 【W-1 姫粉引抹茶碗(美濃焼)】のご紹介

粉引とは

「粉引」は、やきものの装飾技法の一つです。朝鮮にて李氏朝鮮時代に誕生し、「粉青沙器(ふんせいさき)」ともいいます。一般に、表面に白い粉状のものが現れた状態を「粉を引いた」「粉を吹いた」と表現しますが、その名の通り、釉肌が粉を引いたように見えることが粉引の名の由来です。

特徴① 3層構造

粉引は、素地の粘土の上に、白化粧と呼ばれる白い泥を全面に施す工程を経て、その上に透明釉をかけてつくられます。通常のやきものは、粘土の上に釉薬をかけた2層構造であるのに対し、粉引は3層構造であることが特徴です。3層であるため、他のやきものよりもぽってりとした厚みがあり、柔らかな表情と趣を感じることができます。また、白化粧による、土ものならではの温かみのある柔らかな白色が特徴です。

▼通常のやきもの(2層構造)
粘土 + 釉薬

▼粉引(3層構造)
粘土 + 白化粧 + 釉薬

特徴② 御本

白化粧を施した器は、窯出しの後に淡い緋色(薄ピンク)の斑点が現れることが多くあります。これは御本(ごほん)と呼ばれ、還元焼成により、素地の中の鉄分が表面に現れる現象です。粉引の味わいの一つですが、その出具合をコントロールすることはできません。全体的にピンクがかって見えることもあれば、御本が全く現れず、白さが目立つこともあります。器による個体差が大きく、それぞれの器の個性となります。

粉引の器のデメリット

白化粧により、独特の美しさを持つ粉引の器ですが、3層構造だからこそのデメリットがあります。それは、シミ・カビ・匂いがつきやすく、ヒビが入りやすいという点です。
粉引は吸水性が高く、簡単に素地の粘土まで水分が入り込みます。吸水した水分は、時間が経てば蒸発して消えることもありますが、3層であるため蒸発しづらく、水シミがつきやすいのです。シミの他にも、カビとなったり、匂いが残ったりしてしまうこともあります。
また、粉引の器を構成する粘土・白化粧・釉薬は、それぞれ膨張率が異なります。そのため、温かい湯を入れるなどして熱が加わると、お互いが違う方向に引っ張り合い、これが釉薬の貫入(ヒビのような模様)や白化粧にヒビを作る原因となります。

わびさび 器を育てる楽しみ

以上のようなデメリットがありますが、安土桃山時代に千利休が茶の湯で重んじた「わびさび」においては、それらも美しさとしてとらえられます。
「わびさび(侘び・寂び)」とは日本独自の美意識で、質素で簡素なものや、古びたものや枯れたものに感じられる美しさを楽しむ、また、不完全であることをよしとするという価値観です。
粉引には先述のようなデメリットがあり、汚れが目立つという弱点がありますが、古くなっていくこと、汚れがついていくことに対して、悲観して廃棄するのではなく、むしろその経年変化を「育てる」と考えてみてはいかがでしょうか。不完全や寂しさを受け入れて、その中にある趣や深みを味わい、一つの景色として楽しみながらお使いいただくことで、「わびさび」の精神を感じていただけるのではないかと思います。

【W-1 姫粉引抹茶碗(美濃焼)】のご紹介


さいごに、弊社で取り扱う粉引の商品をご紹介いたします。
こちらは、ご家庭で気軽に抹茶をお楽しみいただけるよう、抹茶を点てる際に必要な抹茶碗・茶筅・茶杓の3点をセットにした商品です。
抹茶碗は、日本のやきものの中で生産量が国内シェア1位の50%を占める「美濃焼」です。美濃焼は、岐阜県南部の東濃地方で生産されている陶磁器の総称で、その歴史は1300年以上であるといわれます。多様なデザインと使い勝手の良さで知られており、国内外で人気があります。
この抹茶碗は、安定感があり口が広くて扱いやすい半筒形のデザインで、口縁はまっすぐな直口(すぐくち)であるため、茶碗の素朴な口触りを楽しむことができます。そのほんのりとした色合いから女性らしさを感じ心を和ませてくれるという外見からのイメージを表し、「姫粉引」と名付けられました。

井元産業では、他にも様々な種類の食器やキッチン用品、雑貨を取り扱っております。
興味を持たれた方はぜひ取引実績のページもご確認ください。
商品の詳細を確認されたい方は、お問い合わせのページからご連絡をお願いいたします。

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