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2023.10.30
コラム
釉薬とは?主な釉薬の種類と特徴
目次
1. 釉薬とは
2. 主な釉薬の種類
_2-1. 成分による分類
_2-2. 質感の違いによる分類
_2-3. 色による分類
3. 釉薬のかけ方
4. 自然釉
5. さいごに
釉薬とは
「ゆうやく」または「うわぐすり」と読み、主に灰や粘土を混ぜて水に溶かした液体です。これを陶磁器に塗って窯で本焼きをすることで、窯の温度や炎によって灰が溶け、ガラス質となり、陶磁器の表面がコーティングされます。
表面をコーティングすることで、器に水が染み込みにくくしたり、器の強度を上げたりします。また、原料の種類や焼き方によって色や質感が変わるため、装飾目的としても使われます。
主な釉薬の種類
釉薬は、さまざまな方法で分類されます。
成分による分類
■灰釉(かいゆう)
木灰、土灰、藁灰などを原料とし、1250℃以上で溶ける高火度釉。日本では平安時代に猿投窯で開発された。乳白色・透明。
■長石釉
長石を主として、土灰や藁灰を混ぜて使う。1100℃以上で溶ける高火度釉。柔らかな乳白色や表面に現れるひびの模様が特徴。
■鉛釉
酸化鉛を原料とし、800℃で溶ける低火度釉。色絵や上絵の絵の具として用いることもある。
■鉄釉
鉄を原料とし、その含有率と焼成の具合で色合いが変わる。鉄分が微量だと、黄釉や青磁釉に、10%前後だと黒釉や柿釉などになる。
■銅釉
銅を原料とし、その含有率と焼成の具合で色合いが変わる。緑釉や辰砂釉が代表的。
質感の違いによる分類
■透明釉
焼成する際にほとんどの釉薬が溶けて透明化したもの。透けて見える素地の色を生かせるのが特徴。
■マット釉
釉薬の溶けきらない成分が結晶化したもの。不透明でツヤが出ない仕上がりとなる。食器として使うと、汚れが取れにくかったり、汚れた部分が変色しやすかったりするため、注意が必要。
色による分類
同じ釉薬を使っても、酸化焼成か、還元焼成かによって、仕上がりの色が異なります。
※酸化焼成…窯の中の燃料が完全燃焼する十分な量の酸素がある状態で焼かれ、土や釉薬の金属成分が酸素と結合することでおこる化学反応。
※還元焼成…窯の中の空気の量を制限して、不完全燃焼・窒息状態にすると生じる炭素を含んだ炎で焼かれる焼成。窯の中の一酸化炭素が槌や釉薬から酸素を奪う化学反応。
■緑釉
酸化銅を用いた銅緑釉を指すことが多い。高火度釉(1100℃以上で溶けるもの)は織部釉として、低下度釉(800℃くらいで溶けるもの)は古代の三彩や緑釉に用いられた。
■黄釉
微量の鉄分が酸化焼成により淡い黄色に発色する。黄瀬戸釉が代表的。
■黒釉
多量の鉄分により黒く発色する。瀬戸黒、天目釉などが代表的。湯茶碗として使われることが多い。
■白釉
蛙目粘土に珪石・珪砂などをまぜた白い素地に、透明釉をかけたもの。もしくは、釉が乳濁して白色になるもの。日本では17世紀の伊万里で作られるようになった。
■辰砂釉(しんしゃゆう)
透明な基礎釉に黒色の酸化銅を加え、還元焼成をすることで血紅色に発色する。
■柿釉
鉄分が還元焼成で茶褐色に、酸化還元で黒っぽい色になる。日本の益子などで焼かれている。
■青磁釉
鉄分が還元焼成で青緑色に発色する。朝鮮の高麗青磁が有名。日本では有田を中心に広がった。
■瑠璃釉
鮮やかな青、藍、瑠璃色。長石釉に酸化コバルトを加えてできる。有田では初期の伊万里の時代から瑠璃釉が用いられている。
釉薬のかけ方
釉薬のかけ方にも、様々な方法があります。同じ釉薬であっても、かけ方次第でやきものの印象は変わります。
・浸し掛け:釉薬に直接やきものを浸す。均一に施釉できるが、多くの釉薬が必要。初心者でも失敗が少ない。
・流し掛け:ひしゃくなどを使って釉薬をかける。
・吹き掛け:スプレー等で吹き付ける。濃淡の調整が可能。
・塗り掛け:刷毛等を使って塗る。塗りムラができやすい。
自然釉
釉薬の中で最も古い手法が、自然釉です。これまでご紹介したように釉薬をかけて焼成するのではなく、焼成中に窯の中の灰が自然に降りかかり、それが溶けて自然にガラス質が発生することを自然釉と言います。窯の種類や大きさ、焼成方法などの条件によって色や質感は様々です。
さいごに
釉薬は、表面をコーティングさせて汚れを防いだり、割れにくくしたりと、人々が生活の中でやきものを扱いやすくすることとなりました。
また釉薬は、やきものの印象や仕上がりに大きく左右します。同じ素材、同じ釉薬を使っても、その時の窯の状態や炎の具合などの条件によって、仕上がりの異なるものが出来上がります。全く同じ物は作り出せないこと、偶然の産物によるものであることは、芸術家たちを魅了する理由の1つであると言えるでしょう。
やきものを購入したり、自分で製作する際には、釉薬についても着目してみると、これまでと違った視点でやきものをお楽しみいただけるのではないでしょうか。
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